明けましておめでとうございます、田部です。
少々時期外れですが、今回のテーマは除夜の鐘です。各地で鐘の音がうるさいとの苦情が寄せられて除夜の鐘を自粛する寺院が出ていることに対して「伝統文化が失われる」といった意見も出ています。しかし同時に、近年は宗教的多様性を尊重すべきであるというスローガンを掲げる動きも世界中で起こっています。
今回は、除夜の鐘の賛成意見と反対意見を通して、宗教行事はどこまで許されるのかを一緒に考えてみましょう。
除夜の鐘に賛成する意見
まずは、除夜の鐘を続けるべきであるという理由から考えていきます。
①除夜の鐘は日本の伝統である
鎌倉時代より伝わっているとも言われる除夜の鐘は、既に日本の風物詩として定着していると言っても過言ではないでしょう。
NHKの「ゆく年くる年」という報道番組(私はこの記事を書くまで、宗教番組であると思っていました)でも毎年除夜の鐘をつく場面が放送されており、近くに寺院のない方にも馴染み深いかもしれませんね。除夜の鐘は日本の伝統であり、他者に口出しされる謂れはないという意見が出ることは当然といえば当然でしょう。
②日本には信教の自由がある
そもそも除夜の鐘は、煩悩を祓うという宗教的意義のある行事であり、日本の法律を守っているならば、あらゆる思想も宗教活動も抑制されるべきではないという意見です。
日本国憲法第十八条には「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」とあります。当然ですが、桶教も勿論、信教の自由を尊重しています。少なくとも日本において、健全な宗教活動を阻止されるようなことは望ましいことではありません。
除夜の鐘に反対する意見
次に、除夜の鐘への反対意見を挙げてみましょう。
①うるさい
あんなに大きな鐘を鳴らすのですから、近くに住んでいればうるさいですよね。
……と言うと、ただの感情論であるかのように捉えられるかもしれませんが、そんなことはありません。
こちらの記事では、除夜の鐘の音量を100メートル離れた場所から計測し、62デシベルであったと書かれています。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191215-00597535-shincho-sociまた、調停の結果、裁判所から防音パネルの設置を言い渡されたというお寺も存在します。
環境省のガイドラインにもある通り、一般に、夜間に60デシベル以上の音を鳴らすのは、騒音として認識されても仕方のない音量です。伝統などを抜きにして考えてみましょう。もし近所に宗教施設が建設され、宗教活動と称して夜通しロックフェスが開催されたとして、あなたがうるさくて迷惑していると伝えても「宗教行為だから」と一蹴されたとしたら、どう思うでしょうか?
②日本には信教の自由がある
賛成派の掲げる信教の自由は、当然ですが、反対派の方にも適用されます。
煩悩を祓うための鐘という概念は仏教の考え方です。日本国憲法第十八条には「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」とあります。宗教そのものを信じない(信じないという度合いにも様々あり、断固として宗教を拒絶するというスタイルも存在します)、あるいは別の宗教を信じている人からは「除夜の鐘は、一般に騒音として認識される音量の鐘を鳴らして仏教行事を押し付けている」と判断されてしまう可能性もあり得ます。
結局、除夜の鐘は良いのか悪いのか
さて、長々とお話してきましたが、桶教は、どちらが正しいのか結論を出すことはしません。普通の宗教ならば、こう考えましょうとアドバイスするものですけれど、桶教の目指す活動は思想の押しつけではないので、除夜の鐘が宗教行事として相応しいかどうかについては、皆様それぞれに答えを出していただきたいと思います。
賛成派と反対派のどちらにも言い分はありますが、これからは日本の行事や宗教を伝統と感じることのない海外の方が多く訪れることも予想されています。そのため、除夜の鐘以外にも、多種多様な宗教活動とそれに伴うトラブルが起きることが増えていくことでしょう。
他者の宗教活動をどう受け入れるか、どこまで受け入れられるのか。今後の世間の流れにも注目したいところです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。